解体工事前後のお祓い ―解体清祓い・魂抜き・地鎮祭について―

日本では神道の教えにより、神羅万象には神さまが宿っているという考えが深く根付いています。

森羅万象ですので、皆さんの身近なところでいうと、「家」や「愛着があるもの」「神棚・仏棚」なんかも神道の思想においては、気や魂が宿る対象です。

 

解体工事をお控えの方、こうした気が宿ったモノの処分にお困りではありませんか?

 

これはなにも珍しい話ではなく、家庭ごみなどと違って普段から頻繁に捨てるものではないので、処分・移動の仕方を知らないという方は意外といらっしゃいます。

 

結論から言うと、こうしたものはそのまま捨てたり移動させたりするのではなく、お祓いをして「モノ」の状態に戻してあげると良いそうです。

 

とはいえ、「お祓いってどうしたらいいの?」「必ずしなければならないの?」なんて疑問も湧いてきますよね。

 

そこで今回は解体工事にまつわるお祓いについて、解説していきたいと思います。

1.解体工事前に行うお祓い

ひとくちにお祓いと言えども、そのタイミングや内容はさまざまです。

 

解体工事においては、工事の「前」と「後」で執り行う儀式が分けられるため、順を追って見ていきましょう。

 

解体清祓い(かいたいきよはらい)

まずは、解体清祓い

解体清祓いとは、建物自体を清めて宿った気や魂を抜くという意味合いがあり、解体前に行うお祓いとされています。

 

これまで安全に暮らすことができたことに対して感謝を示すとともに、取り壊しの報告・許しを得ることで解体工事が無事に終わることを祈願するものです。

 

この解体清祓いは、神主さんへ依頼をすることになり、当日は現場まで出向いていただいてお祓いをしてもらいます。

 

お祓いと聞くと、なんだか高そう…と思いますよね。

 

実際、解体清祓いにかかる費用は相場として4万円~10万円前後と言われており、決して安い金額ではありません。

細かな内訳としては、初穂料・準備費・(場合によっては)神主さんの出張費等があります。

 

ただしこれはあくまで相場なので、お祓いの規模や依頼する神社によって準備するものが異なり、それに応じて費用も変動してきます。

 

より正確な費用を知りたいという方は、事前に確認しておくことをおすすめします。

 

また、気になる人が多いであろう服装や日取りなどについては、厳密な決まりごとはありません

華美でない平服で、参加者と折り合いのつく日程で実施すれば問題ないでしょう。

 

ただし「こうして決めると良い」と言われている考え方はありますので、もしも気になるという方は、以下をご参考いただければと思います。

補足

建築関係の儀式を執り行うのに良いと言われている六曜:友引・大安・先勝・先負

縁起物やお祝い事の儀式に良いと言われている時間帯:午前中

 

魂抜き(たましいぬき)

魂抜きとは、神棚や仏壇を手放したり処分する際に行う儀式のこと。

そのため、こちらも解体や処分・移動の前に行うものです。

 

仏壇や神棚というのは購入時に魂を入れ、「モノ」から「拝むもの」にするのが通例です。

 

当然ですが、一度魂入れされたものは魂を抜かない限り、そのまま魂が宿っている状態。

そこで行うのが「魂抜き」です。

 

魂入れが霊験を宿らせるものに対し、魂抜きは読んで字のごとく、宿った魂を抜くことですので、「拝むもの」からまた「モノ」の状態に戻してあげるということですね。

 

この魂抜きは、皆さんのご先祖さま代々のお墓がある菩提寺に依頼してやっていただくものになります。

 

費用としては、お寺へのお布施、場合によってはお坊さんへお渡しする御膳料やお車代などが発生します。

 

まずお布施は、相場が3~5万円程度。

※こちらの金額も、お寺との関係性や地域によっても異なってきます。

 

そのほかお坊さんへの御膳料とお車代などについては、状況によってかかってくる費用です。

そのため確実にいくらとはお伝え出来ませんが、合わせて1万円前後ほどと捉えておくと良いでしょう。

 

これらをすべてを含めると、魂抜きにかかる費用は、トータル5~7万円程度といったところでしょうか。

 

また、解体清祓いの際と同様、魂抜きについても服装や日取りに厳密な決まりはありません。

2.解体工事後に行うお祓い

解体工事も、無事に完了しました。

「よし!解体も工事前のお祓いもしたし、後はもう無いかな?」

 

…いえいえ、実は解体工事後におこなうお祓いもあるんです。

 

お世話になった家への感謝の気持ちや、新たな家を建てる場合はその建築工事の安全や新しく建つ家の繁盛を祈願するという目的のもとで行われるもので、【地鎮祭】と呼ばれる儀式です。

 

果たしてこの地鎮祭、どのようなお祓いなのでしょうか。

 

地鎮祭(じちんさい、ことしずめのまつり)

地鎮祭とは、前述したとおり解体工事後に行われるお祓いのことで、その歴史はなんと弥生時代までさかのぼると言われています。

 

とっても長い歴史ですよね。

 

工事の安全祈願やその土地の神様への祈祷をすることによって安心感が芽生え、その後も安心して暮らす心のゆとりができるとして、令和の現代においても多くの方が地鎮祭を執り行っています。

 

この地鎮祭は、神主さんにお願いしてやっていただくのが一般的です。そのため、解体清祓いや魂抜きのときと同様に初穂料やお車代、祭壇や御神酒等の事前準備費用が発生してきます。

こちらは諸々で、4~7ほどかかるといわれています。

 

地鎮祭の日取りや服装についても、これまで取り上げた解体清祓いや魂抜きと同様、絶対的な決まりはありません。

ご自身の状況や、お気持ちに合わせて決めていただければ問題ないでしょう。

 

3.そもそもお祓いはするべきかどうか

さて、ここまで解体工事前・解体工事後で行う儀式として3つご紹介してまいりました。

 

ここでおそらく多くの方が気になっているであろう、お祓いが本当に必要かについて触れたいと思います。

やはりこうした儀式は、多かれ少なかれ費用もかかってきますし、懐に余裕がないとやりたくてもどうしても難しいという方もいることでしょう。

 

実際問題、そうした声はよく聞かれます。

 

まず、答えとしては「お祓いは義務ではない」です。

つまり、必ずやらなければならないものではないということですね。

 

昔からこうした儀式の執り行いというのは意見が二分化するもので、神聖なものだからやるべきだという声もあれば、多額の費用を払ってまでやる必要はないという声もあります。

 

もちろん義務ではないので、どちらの声が正解・不正解というのはありません。

 

ですが後になって不安になったり、不運なことに工事中に事故等が起きてしまって中断・断念せざるをえない状況などに陥った時に後悔するぐらいなら、多少費用をかけてでもやっておいたほうがいいかもしれません。

 

また、ご自身だけで判断しないというのもひとつの考えです。

 

やるべきかどうかどうしても迷ってしまうようであれば、周囲の意見にも耳を傾けながら相談して進めると、トラブルや意見の食い違いを防ぐことにつながりますよ。

おわりに

今回は、いざ直面すると意外と知らない、不用になってしまった魂・気が宿ると言われる品々(家や愛着があるもの、神棚・仏棚)の処分・撤去にまつわる儀式について取り上げました。

 

神道の考えを重んじる、日本人の信仰心から誕生したこれらの儀式。

 

ですが、解体時や引っ越し・新築時などは何かとバタバタしてしまい、ついつい後回しで疎かにしてしまいがちですよね。

 

こうしたものは、個々人の信仰心や考え方による部分がとても大きいです。

 

まずは解体工事の前後にはこんな儀式があるのだな、ということだけでも頭の片隅に入れておいていただき、その後の儀式の執り行いの必要性については、ご親族でよくお考えいただいたうえで決めていただくと賢明でしょう。

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