解体工事の知恵袋
editor@ishiishoji
旗竿地でも建て替え工事はできますか?-工事の前に知っておきたいこと
「旗竿地(はたざおち)」というワードを、見聞きしたことはありますか?
はじめて目にした人からは、読み方も分からなかったなんて声も聞こえてきそうですね。
旗竿地とは、細い私道を通った先にある土地のことを総称した言葉です。
京都では、旗竿地のことを「うなぎの寝床」と言うんだとか。
旗竿地の「間口が狭くて奥行きが長い変形地や建物」を例えるのには、ぴったりな感じがします。
ところで、こうした変形した土地に建てられている家というのは、決して少なくはありません。
一方で、もし建て替え等で解体を検討する際に、敷地の間口の狭さから、そもそも工事ができるのかどうかと心配に感じる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、少し特殊な立地にあるお家のメリット・デメリットから、解体や建て替え時の注意点まで、工事の前に知っておくべきことを一挙にご説明いたします。
(1)旗竿地(はたざおち)ってどんな土地?
旗竿地とは、前述した通り、細い私道の先に広がる土地のこと。
不動産業界では「旗竿敷地」や「路地状敷地敷地延長」、「敷地延長」などと呼ばれることもあります。
おそらく言葉だけでは分かりにくいかと思いますので、1枚イメージ画像をご用意しました。
よくよく見ていると、建物が建つ部分が旗、路地状の部分が竿のように見えてきませんか?
この、旗と竿のように見える見た目が「旗竿地」という一風変わった呼び名が付けられた由来だそうです。
(2)旗竿地のメリット・デメリット
旗竿地は、整形地とはちがって土地が変形している特質上、メリットもデメリットもあります。
ここでは、よく言われるものを3つずつピックアップしてご紹介したいと思います。
メリット
- 土地の単価が比較的安価
- 建物が通りに面していないため、通りの人目が避けられる/静かに過ごせる
- 竿(路地状敷地)の部分も使えるため、ガーデニング等の趣味に活用できる
デメリット
- 建築コスト・解体コストがかかる可能性がある
- 隣家との距離が近い
- 日当たり・風通しを良くするための工夫が必要
もちろん、物件えらびの基準は人それぞれですので、旗竿地の善し悪しの判断は一概にできません。
たとえば、購入時の安さを重視している方や、静かな暮らしをしたいという方にはおすすめですし、反対に、日当たりが気になる方や、お隣さんとの距離が近いことに抵抗がある方にはおすすめできません。
そのため旗竿地の購入を検討されている場合は、メリット・デメリットを良く調べ、少しでもご自身の条件に叶ったところを探すようにしましょう。
(3)旗竿地は建て替えできないって本当?
ところで、「旗竿地だと建て替えができないって本当ですか?」というご質問をいただくことがあります。
たしかに土地の形が特殊ですし、多くの方が気になるところかと思います。
ですが、ご安心ください。
たとえ旗竿地であっても、ある一定の条件を満たしていれば、工事することは実質可能です。
その代わり、なかには条件を満たしていないことで建築基準をクリアできず「再建築不可」と認定される物件もありますので、その点は要必要です。
(4) 旗竿地の建て替えは「接道義務」がカギを握る
旗竿地の建物の建て替えの際に、確認しておくべきこと。
それは「その土地が『接道義務』の規定を満たしているかどうか」という点です。
接道義務ってそもそもなに?
まずは、旗竿地建て替えのカギを握る「接道義務」のご説明からしていきたいと思います。
接道義務とは?
建設物の敷地が、幅員4m(または6m)の道路に対して、2m以上接していなければならないという規定。
なんだか細かいきまりで厄介に感じるかもしれませんが、実はとても大切なこと。
というのも、このような決まりが義務化したのには「緊急事態が起きた際に困らないようにするため」という背景があります。
もちろん決して起こってほしくはないですが、
このような事態が起きた際に、緊急車両が近くまで駆けつけられないと困りますよね。
万が一に備えての経路の確保をするために、建物の建築時には、接道義務を満たしている必要があるのです。
ですが旗竿地はその構造上、接道義務を満たしていないことが多々あります。
そのため、旗竿地にある建物を建て替えたいとお考えの場合は、まずはその土地が条件を満たしているか、かならず事前に自治体へ確認することが大切になります。
接道義務を満たしていなくても工事はできる?
じつは接道義務で定められた条件を満たしていなくても、工事の許可が下りるケースもあります。
その際に見られるポイントは、以下の3つ。
- その敷地の周囲に公園・緑地・広場などの広い空地があること
- その空地が、農道その他これに類する公共用の道(幅員4m以上のものに限る)に2m以上接すること(農道、河川管理道路、港湾施設道路など)
- その敷地が、建築物の用途・規模・位置および構造に応じて避難や通行の安全の十分な幅員をもつ通路で、道路に通じるものに有効に接すること
一見難しく見えますが、上の3つの内容を簡単にまとめると、
- 道路がなくても、周囲に空地がある
- 規定の幅員の道路ではないが、道自体はある
このような場合に、例外が認められる可能性があるということになります。
ですが、こういったケースはイレギュラーのため「建築審査会」に申請する必要があり、そこで許可がおりないといけません。
また、許可が下りたとしても、建て替えが発生するたびに毎回建築審査会から許可を得る必要があるので、頭の片隅にでも入れておきましょう。
万が一、建築審査会からも建築許可が出なかったら、残念ながら建て替え等は行うことができません。
その場合は、現存している家の基礎と骨組みをそのまま残したうえでフルリフォームをする等、別の方法を検討する必要があるでしょう。
(5) 旗竿地の解体で注意すべきことは?
無事に接道義務の条件などもクリアし、じっさいに旗竿地で家屋の解体・新築ができることになりました。
その際、どのようなことを念頭に置いて工事に臨むと良いのでしょうか。
工事期間について
旗竿地は、敷地の間口が狭いことが大半のため、人力でないと作業ができない場合があります。
とうぜん大きな機械が入れる現場であれば、工事期間はそのぶん短くなりますが、人力の場合はどうしても時間を要します。
そのため、工期が想定よりも長くなるかもしれないという認識をもっておくようにしましょう。
工期をできる限り短くしたいという場合は、一度業者さんに相談をしてみましょう。
もちろんきちんとした会社であれば、事前に工期の説明は必ずあると思いますが、ご不安な場合は工事に入ってからのミスマッチを防ぐためにも、しっかりと質問しましょう。
近隣への迷惑について
人力での作業となった場合、一日に何度も作業員が竿部分を行ったり来たりすることになります。
その際の足音や、荷台を運ぶ音や持ち上げるときのかけ声、そのほか作業で発生しうる「音」はたくさん考えられます。
ほかにも作業員の不注意から、近隣の壁にぶつけてしまうなどの物損事故が起きてしまうなんてことも、絶対に起こらないとは言い切れません。
旗竿地の狭さ特有の起こりうるトラブル等は、あいさつ回りの際にあらかじめ説明しておくことが大切です。
信頼できる業者えらびについて
近隣という観点で、もうひとつ大事なのは「業者の選び方」です。
旗竿地で建て替えるときには、解体工事や建て替え工事が丁寧にできることは当然として、お隣への配慮もできるような「プロ精神」をもった業者に依頼しましょう。
旗竿地での工事は、どうしてもその狭さゆえに近隣へのご負担は避けて通れません。
「そんなこと言われても、そこまで気が回らないし、どうやって見極めればいいの…?」という方は、ぜひ次のポイントだけでも、最低限押さえておくようにしましょう。
- 相談時の対応が親切で丁寧かどうか
- 工事のリスクなどについて、あらかじめ説明をしてくれるか
- 金額等に不当性はないか
-
近隣へ事前に丁寧に挨拶・説明まわりをしてくれるか
残念なことに、こうした「当たり前の対応」ができていない業者というのは、星の数ほど存在します。
不誠実な業者にひっかかって、トラブルのもとを増やすことがないよう、業者えらびは慎重にいきたいところですね。
まとめ
旗竿地は、少し変わった形をしているため、解体・建築工事ができるのかどうかと不安に思う方は多いかと思います。
たしかに接道義務の条件を満たしていないと、法律上建て替えそのものができないという旗竿地もありますが、条件などに問題がなければ、旗竿地であっても工事自体は可能ですのでご安心ください。
ただし、旗竿地の工事には注意点もあります。
その中でも一番大きいのが、「近隣への影響」です。
騒音や物損事故等、適当な業者にあたってしまうと、工事トラブルを超えて近隣トラブルに発展してしまう可能性も。
そうならないためにも業者えらびにはなるべく時間を割いて、より丁寧な仕事をしてくれる業者を選ぶようにしましょう。
石井商事では、旗竿地の工事もいくつも実績を積んできておりますので安心してお委ねいただければと思います。
過去の施工事例も上のリンクから見ることができますので、ぜひお目通しください。